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日本史についての雑文その79  主権絶対論
まず啓蒙主義的な社会哲学の嚆矢は1651年にイギリスで「リヴァイアサン」を著したトマス・ホッブズであり、彼は性悪説に基づいて混沌の支配する原始的な自然状態というものを想定し、そこにおける各自の持つ自然権の暴走による社会の混乱を抑止するために、社会構成員が契約によって国家を作り、国家は主権を有しており、この主権が国民の自然権の暴走を抑止して社会の平穏をもたらすとしたのです。
こうして一種の思考実験上で国家の成り立ちというものを理論的に説明しようとしたのがホッブズの考え方であり、これはデカルト的な理性的方法論であったといえるでしょう。

ホッブズは神の思し召しで国家が成立したのでないとすれば、それは国家構成員の何らかの契約によるものであると仮定したのです。実際にそんな契約があったのかどうかは分かりませんが、ホッブズが言いたいのは国家はそのようであるべきであるということで、絶対神の存在を介在させるべきではないとしたかったのです。
このように国家の主権が宗教活動も含む国民の諸権利に優越することによって、教会権力の暴走を抑え得るのです。ここでホッブズは人間を神をも超えるものと規定しているわけではないのです。むしろ人間の持つ自然権の暴走を警戒する立場には立っています。ただホッブズが言っているのは、人権の暴走を止めるために国家主権が存在するということで、神は存在を否定されているわけではないのですが、国家の成立には関与しないのです。

このようにホッブズが人間を性悪なものとして警戒し、その権利の暴走を抑制しようとしているのは、1642年に起きた清教徒革命においてイギリス国内が人民の宗教的熱狂によって荒れ果て、国王を処刑するという不祥事も引き起こしたことを批判している立場だからです。
つまりホッブズは革命の逸脱を肯定する立場ではなく、むしろ社会の安定を保つために国王の統治を肯定する立場でした。ただ、その国王の統治の正当性の根拠として、王権神授説をとらずに、神を介在させずに契約を介在させるという理性重視の方法論をとっているのです。
王権神授説においては、人間というものは本来性悪なもので各自が勝手なことを主張していては社会が収拾がつかなくなるので神が王権を授けた者が王となり各自の権利に優越した主権を持ち、各自の権利の暴走を抑止して社会を安定させるという国家観が展開されているのですが、ホッブズの理論は基本的にはこれと同じ構図でありながら、神が介在せず、各自の自然権の暴走を抑止するための国家主権を、国民の総意による「契約」に由来するものであるとし、その主権を国王が行使しているとしたのです。
王権神授説自体が一種の主権絶対主義なのですが、そこに神という上位者の存在を介在させないホッブズの社会契約説のほうが、より主権への歯止めが欠如しており、究極の主権絶対主義といっていいでしょう。
つまり国家主権という究極の強制的権利すら、人間同士の契約によって人工的に作ることが出来るということは、国家を人工的に作ることが出来るということであり、国民の総意さえあればどんな法律でも作ることが出来るという意味で、ホッブズ理論は人定法主義であるといえるでしょう。
人定法主義とは、手続きがルールに合致してさえいればどんな内容のものでも法律として制定できるという考え方で、例えばユダヤ人大量虐殺もナチスドイツ政府によって全く合法的に正当な手続きによって作られた法律に基づいて行われたのです。果たして、本当にこのような立法が正当だといえるのでしょうか?

しかしこのような主権絶対主義は、イギリスにおいては既に1628年の権利請願においてエドワード・コークによって、自由な社会においては国内の統治関係に絶対的な主権など存在させてはいけないとして非難されており、このホッブズ理論はそれへの挑戦であったのです。
コークがこの権利請願において非難したのは国王ジェームズ1世らによる君主絶対主権論であったので、「国王も法の下にある」として国王大権への制限を加えたのですが、これは国王大権に限らず主権絶対論への批判であり、「法」こそが全てを支配する主権者であるという「法の支配」という原理であったのです。
なぜ「法の支配」が主権絶対論に反するものとなるのかというと、コークの定義による法の分類によれば、慣習法であるコモン・ロー、国会の立法による制定法、そして特別な慣習の3種類の法があり、このうち最も優越するのが慣習法であるコモン・ローであるとされているからです。
つまりこの慣習法が国王大権のような「主権」をも制限しているのであり、国王であれ議会であれ、どのような強大な権力によっても、この伝統と慣習によって培われてきたコモン・ローに反するような法律を勝手に制定することは出来ないということなのです。そういう意味で、法治主義下においてはコモン・ローを超える「主権」などというものは存在し得ないのであって、あえて主権者を求めるとすれば、伝統と慣習による叡智の結晶であるコモン・ローこそが主権者といえるのです。
このコモン・ローによる支配が「法の支配」というもので、単なる法治主義とは全然違う概念なのです。一般の制定法が伝統や慣習による支配を受けるというのが「法の支配」の本質だといえるでしょう。
このような「法の支配」を重視する考え方を人定法主義に対して、実定法主義ともいうのです。

このように過去のしきたりや判例などの慣習法を重視する考え方はゲルマン法思想の特徴であり、イギリスやアメリカの法思想はゲルマン法を基本としています。一方、制定法を重視する考え方は啓蒙主義の影響により古代ローマ以来のローマ法に重きを置くローマ法思想の特徴であり、これはヨーロッパ大陸の主流となり、大陸法思想と呼ばれるようになりました。つまり「法の支配」というのは英米法思想に特有の考え方なのであり、大陸法思想の系譜を濃く受け継いでいる近代日本においてはあまり馴染みが無い概念なのです。
このような法律を超えた「法」であるコモン・ローを成文化しようとしたものが憲法というものであり、コーク理論に従うならば憲法の本質はコモン・ローにあるのです。つまり憲法というものは伝統や慣習に沿ったものでなければならないということです。
ただイギリスの場合は、コモン・ローをあえて成文化しようとはしませんでした。成文化せずともコークによって過去の判例などが整理されて慣習法の大全が出来上がっていましたし、成文化することによって人工的に改変されてしまうことを恐れたからです。
コモン・ローの実際に現実社会に現れた姿はだいたい過去の裁判の判例集ということになり、それゆえにイギリスの議会の主な役割は、法律を制定することはむしろ抑制されており、国王を頂点とする行政府の作る法令をコモン・ローすなわち過去の判例集に照らして審査する上級裁判所のような役割が主であったのでした。後のフランス革命議会のように「主権者」として恣意的な立法を濫発するような存在ではなかったのです。
このようなコークの考え方においては、伝統や慣習があらゆる権利や権力に優先されるということになるのですが、ホッブズはそれに異を唱え、長年の因習を根拠とすることを嫌い、科学的思考をもって、人民相互の一時の契約でもって絶対的な主権を人工的に作って他の全てのものを服従させることが出来ると唱えたのです。これは制定法優越主義に繋がります。つまりホッブズは大陸法思想の起源にあたるのです。

しかしこのホッブズの理論では人間性悪説を基本としているのですから、その人民による契約によって生じた主権に絶対的権限があるというのは矛盾のあるところです。
その人民の契約に何らかの叡智や徳が付加されなければ、主権などというものは生じないのであって国家も形成されないのですが、ホッブズ理論ではそういう叡智や徳が入り込む余地はありません。このままではホッブズ理論は国家存在の説明理論ではなく国家不存在の説明理論になりかねないわけで、社会哲学としては不完全なものでした。
この欠陥を埋めるためには、やはりその契約に長年蓄積された伝統や慣習を介在させることによって叡智や徳を付加するという方法が適切なのでしょうが、そうなるとコークの理論と同一のものとなり、結局は主権というものは否定され、「法の支配」を受け入れることになり、それは結局、デカルト以来の理性万能主義の放棄ということになってしまうのです。
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この記事に対するコメント

 大変参考になりました。
 私の方もリンクいたします。
 今後ともよろしくお願いいたします。

 TB・コメントは自由になさってください。
 私の記事と関係なくてもOKです。

【2007/02/17 01:42】 URL | 柳生すばる #Umrgomz2 [ 編集]



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